“はじめてのお母さんへ”

−小児科医からの子育てアドバイス−

 

 

≪内  容≫

1.はじめに

2.母乳育児

3.お部屋の温度

4.皮膚の清潔

5.よくみられる赤ちゃんの症状へのアドバイス

6.お出かけ

7.予防接種

8.乳幼児健診

9.たばこ

10.テレビ

11.赤ちゃんが休日・夜間に具合が悪くなったとき

12.パパの出番ですよ!

 

 

 

 

 


ペリネイタルビジット・パンフレット

大分県小児科医会編)

 

 

 

 


1.はじめに

 

初めておなかに赤ちゃんを授かり、おなかも大きくなるとお母さんは赤ちゃんの子育てに大きく夢を膨らませる一方、不安感をもたれることも多いようです。このような不安を少しでも解消できればと、大分県内の産婦人科医(大分県産婦人科医会)と小児科医(大分県小児科医会)が一緒になって平成13年からこのペリネイタルビジット事業を開始しました。これは産婦人科医と小児科医が連携して妊娠・出産・育児を経験される“お母さんとそのご家族を支援したい”という強い思いからです。ペリネイタルビジットでは出産前・後に産婦人科医がお母さんの希望される小児科医を紹介し、お母さんとできればお父さんも一緒に小児科クリニックを訪れて頂いて、子育て相談をして頂くものです。何でも気軽に小児科医にお聞き下さい。

このペリネイタルビジット事業は大分県で最も積極的に取り組まれていて、医師会(大分県産婦人科医会・大分県小児科医会・大分県医師会)と行政(大分県・大分市・別府市・杵築市)が協力して事業を行っています。今後は大分市・別府市・杵築市以外の県内の他の市町村にもペリネイタルビジット事業が広がり、大分県が全国一“子育てしやすい県”になることを願っています。

 

2.母乳育児

赤ちゃんが生まれると母乳がでるようになりますが、赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によって、母乳分泌を増加させるプロラクチンというホルモンが分泌され、母乳がたくさんでるようになることが知られています。赤ちゃんにおっぱいをしっかり吸わせましょう。

 

母乳栄養の良い点は、

@    赤ちゃんを病気から守ってくれる物質を沢山含んでいる、

A    消化吸収しやすくて安全である、

B    アレルギーを起こすことが少ない、

C    お母さんと赤ちゃんの結びつきをより強いものにする、

D    赤ちゃんが欲しがる時にすぐに与えることが出来る、

E    経済的である、   

などが挙げられます。

 

しかし母乳栄養にも問題点があります。

@     ビタミンK欠乏症

母乳栄養児ではビタミンK不足により、生後1か月頃にまれに頭蓋内出血を生じることがあります。このため新生児や母乳栄養児のビタミンK不足を防ぐために出生当日・産科退院時にビタミンKシロップを飲ませるようになりました。また生後1か月健診でもビタミンKシロップが与えられ、母乳栄養によるビタミンK不足が予防できるようになりました。

 


A 母乳性黄疸

母乳栄養児では生後1か月健診時にもまだ黄疸が残っていることがあります。しかし便が黄色であれば母乳による黄疸が疑われます。その多くは生後2か月頃までには消失し、赤ちゃんには何ら影響がありませんので母乳をつづけましょう。便が白い場合や黄疸が強い場合は小児科医に相談しましょう。

 

母乳はお母さんの血液からつくられますので、お母さんがとられる食事・薬・嗜好品等から多少なりとも影響を受けます。食事はバランスのとれた内容を心がけましょう。

 

B 薬の母乳移行

お母さん方が服薬した薬の一部も母乳に移行することが知られています。しかし多くの薬で、母乳中の量はお母さんの服薬した量の1%未満といった微量であることが報告されていて、一時的な服薬であればほとんどの薬は赤ちゃんに問題ないと考えられます。長期間にわたり服薬する場合は医師に相談して下さい。

 

C 嗜好品の母乳移行

 妊娠中にアルコールを多く摂取すると胎児性アルコール症候群と呼ばれる障害が、生まれてくる赤ちゃんに生じることが知られています。またアルコールは容易に母乳中に移行し、母乳中のアルコール濃度はお母さんの血液濃度と同じ程度となります。しかもアルコールを代謝分解する酵素は、赤ちゃんでは未熟ですから大人より大きな影響を与えます。ですから妊娠中と授乳中のお母さんはアルコールを避けることが賢明です。

 

D 嗜好品の母乳移行

 コーヒー・紅茶・緑茶に含まれるカフェインの母乳への移行は少ないようです。しかしカフェインの大量の摂取(1日8杯以上)では赤ちゃんの興奮・不眠などの影響が心配されます。カフェインを含む嗜好品は飲み過ぎないようにしましょう。

 

E お母さんの病気

 お母さんの病気が母乳を介して赤ちゃんに感染することはほとんどありません。しかし一部のウイルス感染症が母乳を介して赤ちゃんに感染することも報告されていますので、産婦人科医・小児科医にお聞き下さい。

 

3.お部屋の温度

病院から退院したばかりの赤ちゃんでもお母さんが快適と感じられる温度環境であれば体温調節は可能です。夏は27℃、冬は20℃であれば大丈夫です。大切なことは室温をほぼ一定にすることで、このことが暑さや寒さのストレスから赤ちゃんを守ります。しかし厳密な温度設定でなくても大丈夫です。

冬の暖房時には加湿を行ったほうが良い場合もありますので注意しましょう。

 

4.皮膚の清潔

赤ちゃんは新陳代謝が盛んで皮膚からの分泌物も多く、また排泄物で皮膚が汚れやすいので皮膚の清潔を保つことはとても大切です。特に顔や頭は皮脂の分泌が盛んで脂漏性湿疹(かり)がでやすいところです。皮脂はお湯のみでは落ちにくく、石鹸を使用して洗うことも必要です。赤ちゃんの表皮は大人の1/3の薄さで、デリケートですのであまり擦りすぎないようにしましょう。

 

 

 


5.よくみられる赤ちゃんの症状へのアドバイス

神奈川の小児科の先生が、9,396人の赤ちゃんの1ヶ月健診でお母さんが訴える心配事を調査しました。その時の上位10番目までの症状とその対処方法を多い順に示していきます。

 

@乳児湿疹

赤ちゃんの肌はすべすべして綺麗なことが多いのですが、ときには顔や頭に脂漏性湿疹(かり)や乳児湿疹もよく見受けられます。石鹸を使って洗うことで軽快することも多いのですが、ひどい場合には小児科医に塗り薬の相談をしてみてください。また乳児湿疹の原因が食物アレルギーのこともありますので注意しましょう。

A鼻づまり

赤ちゃんの鼻は小さくて分泌物も多く、風邪もひいてないのに鼻がつまる場合があります。部屋の乾燥がひどいと一層ひどくなります。赤ちゃんは口呼吸がうまくできないので、鼻が完全につまってしまうとおっぱいが飲めなくなったり、眠れなくなってしまう場合があります。見える範囲内であれば鼻を綿棒できれいにしてみましょう。 また入浴も効果的です。入浴で身体が温まり、お風呂の湯気を吸い込むことで、つまった鼻水が柔らかくなるからです。どうしても鼻づまりが改善しないときは小児科医を受診してください。鼻の奥までカテーテルで吸引をすればすっかり楽になります。



 



Bゲップが出にくい

ゲップが出やすい赤ちゃんと出にくい赤ちゃんがいます。ゲップが出にくくて、吐きやすい、うなりやすいなどの症状がみられることもありますが、これらの症状がなければゲップが出にくくても問題ありません。長時間かけてゲップを出そうとするとお母さんも赤ちゃんも疲れてしまいますので、10分試みて、10分休んで、また10分とやってみましょう。34ヶ月頃には赤ちゃんのゲップのトラブルは自然に解消します。

Cよく吐く

赤ちゃんが吐くことはよくあります。母乳を飲みすぎたり、泣きすぎたりすると空気もたくさん呑み込んでしまい、吐くのです。また哺乳後に少量吐くことがありますが、これは溢乳(いつにゅう)といって病気ではありません。たくさん吐いても、機嫌も良好で、体重も順調に大きくなっているのであれば心配ありません。

おっぱいの飲みがいつもより悪くて元気がない、吐く回数と量がだんだん多くなってきた、等の症状がみられれば病気のこともありますので、小児科医に相談しましょう。

 

Dおむつかぶれ

赤ちゃんはオムツの中に便と尿をします。長い間オムツをぬれたままにしていると尿や便の成分が刺激となっておむつかぶれができてしまいます。赤ちゃんはおっぱいを飲むたびに便をすることもしばしばで、おむつかぶれができやすいのです。予防は清潔と乾燥につきます。おしりが赤くなったら、先ずおしりを石鹸で良く洗ってみましょう。洗っても良くならない場合は小児科医に塗り薬を相談してみてください。おむつかぶれに似ていてなかなか治りにくいものにカンジダ性おむつ皮膚炎があります。カンジダというカビでおこる皮膚炎で、おむつかぶれの薬では治らず、別の薬が必要になります。

Eミルクの量がわからない

現在では自律調乳といって、赤ちゃんの欲しがるときに好きなだけ飲ませる

のが原則です。ミルク缶に書いてある量はあくまで参考程度にしてください。

F目やに

黄色の目やにが目頭に少しつく程度であれば心配ありません。緑色や黄色の目やにがたくさんみられて目が開きづらくなるときは、涙が鼻に流れ出す通路(鼻涙管)がつまって結膜炎をおこしている可能性がありますので小児科医を受診してください。

Gゼイゼイ

授乳中や授乳後にゼイゼイが聞かれることがありますが、母乳やミルクのねばねばが喉の奥でからまっているのです。赤ちゃんは咳払いが下手なので少しの間ゼイゼイが聞こえますが、ねばねばが食道に流れると消えてしまいます。肺や気管の病気がなくてもみられるのです。

H便が出づらい

新生児のころはおっぱいを飲むと便をする反射があり、おむつ替えも大変です。

しかし生後1か月をすぎると、11回、23日に1回といった具合に便の回数がだん

だんと少なくなってきます。場合によっては45日に1回しかでなくなる赤ちゃんもいます。しかし便がでなくても、笑顔もみられ、おっぱいの飲みもよく、たくさん吐くこともなければ心配ありません。

便をするときにいきんで苦しそうにする、肛門がきれて出血するなどの症状がみられるときは便秘です。おなかのマッサージや肛門を綿棒で刺激することも有効です。また砂糖水や果汁、離乳食がすすんでいれば果物・野菜を加えることも有効です。どうしても便がでにくい場合は小児科医に相談下さい。浣腸をする場合がありますが、習慣になってしまうことはありません。

Iシャックリ

シャックリは横隔膜のピクツキによって起こり、哺乳後には多くの赤ちゃんでみられます。シャックリが止まらないと苦しそうに見えますが、このことによって他の病気が引き起こされることはありません。何もしなくて大丈夫です。

 

 


6.お出かけ

赤ちゃんもお出かけすることがありますが、お出かけしても大丈夫な月齢はきまっていません。あくまで参考ですが、宮参りやおじいちゃん・おばあちゃんの家へは1ヶ月健診が済んでからがよいでしょう。またデパートなどショッピングに出かけるのは4ヶ月健診が済んでからがよいでしょう。ただ冬のインフルエンザ等が流行している時期はできるだけ人ごみは避けるのは当然です。

また余裕をもったお出かけで赤ちゃんに無理のないようにしましょう。

 

7.予防接種

赤ちゃんはお母さんから抵抗力(免疫)をもらって生まれてきますが、次第にその力は

失われます。お出かけや集団生活(保育園・幼稚園・学校)に入るといろんな感染症にかかる機会が増えてきますので、それを防止するために予防接種が必要となります。予防接種は感染症から赤ちゃんを守るとともに社会全体を守ることにも役立っています。

 予防接種は一般的には生後3か月を過ぎたら受けることができます。受けかたについてはかかりつけの小児科医にお聞きください。大分県では予防接種の相互乗り入れ制度があり、お住まいの市町村以外のかかりつけ小児科医でも接種を受けることができます。

予防接種を受けるときは、接種記録を残すために「母子健康手帳」の持参を忘れないようにしましょう。

 

 

 


8.乳幼児健診

健診を受けることによって赤ちゃんの病気の早期発見・早期治療が

行えるようになります。また赤ちゃんが順調に育っていることの大切

な記録にもなりますし、子育てが順調であることを証明してくれて、

お母さんの大きな自信につながります。乳幼児健診を受けるときにも

「母子健康手帳」を持参しましょう。

健診の月年齢は各市町村で多少異なり、健診方法も個別に一人ずつ

行う個別健診と集団で行う集団健診があります。

 

 


9.たばこ

 タバコの煙にはニコチンをはじめ多くの有害化学物質が含まれていて、発癌性物質と

しても恐れられています。タバコを吸う人も、その側にいる人(受動喫煙と呼びます)も大きな悪影響を受けます。

タバコによって赤ちゃんが早く産まれて体重が小さくなるなど妊娠中の影響も決して見過ごすことはできません。また受動喫煙が赤ちゃんの身体・精神発達へ悪影響を及ぼすこと、喘息を発症する危険性や乳幼児突然死症候群の危険性が増大することも警鐘されています。

また赤ちゃんの誤飲で最も多いのがタバコであり、受動喫煙以外にも異物誤飲事故の原因となります。妊娠や出産をよい機会ととらえて赤ちゃんと家族のために禁煙することを勧めます。最近ではタバコを吸う人の禁煙を手助けする“禁煙外来”も行われていますので、御相談下さい。

10.テレビ

 日本とアメリカの小児科学会は“2歳まではテレビ・ビデオをみせないように”と提言を行っています。これは赤ちゃんが長時間テレビ・ビデオをみることにより、親子の愛着形成が妨げられたり、言葉の発達が遅れたり、情緒が不安定になったりと悪影響が

報告されているからです。最近の調査ではお母さん方の67割がテレビ・ビデオを見

ながら授乳しており、6か月の赤ちゃんの3割が意識的にテレビ・ビデオを見せ始められていることが報告されています。

 赤ちゃんにとってはテレビ・ビデオよりもお母さん・お父さんの語りかけ・まなざしに優るものはないのです。

 

11.赤ちゃんが夜間・休日に具合が悪くなったとき

いつも病気・予防接種・健診など何でも相談できる小児科のかかりつけ医をもちましょう。しかし診療時間外の夜間・休日に赤ちゃんの具合が悪くなった場合も小児科看護師・小児科医師に相談することが可能です。「大分県こども救急医療電話相談」がおこなわれており、大分県内の小児科看護師・医師が交代で下記の時間帯を担当していて、病気やケガのアドバイスや夜間・休日でも診察可能な小児科医療機関の紹介をしています。

  「大分県こども救急医療電話相談」  TEL:097-503-8822または#8000

         平    日 : 19:00〜翌朝8:00

       日曜日・祭日 : 9:0017:00 、19:00〜翌朝8:00 

 

下記の大分県の「豊の国ほっとネット」でも休日・夜間当番医情報を知ることができます。

http://www.hotnet.pref.oita.jp/qq/men/qqtpmenult.aspx

 

 

 

 

 


12.パパの出番ですよ!

赤ちゃんが生まれるとお母さんは普段の家事に加えて、赤ちゃんのオムツ替え・授乳・沐浴と忙しい日々をおくることとなります。また生後3か月ころまでは夜間の授乳のため睡眠も十分とれず、お母さんの心身の負担も多くなります。このような時にお父さんの積極的な育児参加が、お母さんの負担を随分と軽減してくれるものです。